2012/08/06

オリンピック期間中の「ひとり祭り」

テレビもエアコンも無く、この夏乗り切ろうという我が家である。
こういう貧乏臭い暮らしは、今にはじまったことではないから、うちの場合は「電気が無くなったら、今のような豊かな暮らしができなくなる!」ということもないけれど、世の中には、それで困る方が大勢いらっしゃるので、こちらとしては辛抱させていただくより仕方がないわけで。

当然、テレビが無いので、オリンピックはボイコット状態。元々、ルールがよくわからないので、スポーツ自体を「楽しい」と思う性質ではないから、これも困ることはないが。

どの道、世の中が向かいたがる方に、私が夢見て憧れるような美しい暮らしは無い。残念ながら生を受け、死ぬまで生きねばならないいのちの性質のため、もう、あの手この手でだましだまし。
ちなみに、私が夢見て憧れるような暮らしとは、たとえばこんな暮らしである。

…恐ろしい冬の間、女たちは衣類用の毛織物や亜麻布を織ったり、染めたりしている。その間、大部分の男たちは本を読んだり、不思議な瞑想にふけっている。それが深遠な理論や、北国特有の神秘的な夢想や、信仰や、測深機で探られるような学問の一分野に関する完璧な研究を生みだすのである。半ば修道士的な生活だが、そのために、精神は自分自身に作用を及ぼさざるを得ず、そこにみずからの糧を見出さざるを得ない。…(バルザック『セラフィタ』

三島由紀夫の『絹と明察』()に登場する、 翻訳物の小説をやたらに読み、都合が悪くなると修道院へ入ってしまうむかしの女主人公に憧れて いる、菊乃という芸子あがりの年増が抱くような妄想に似ていると、自分でも思う。
でも、本当にそう思うんだから、仕方がない。

それはともかく。
オリンピックの話題にもついていけないので、オリンピック期間中は、「ひとり『戦後史の正体』祭り」をすることにしたのだ。
戦後史の正体』を紐解けば、ブログネタに困ることは無いのだが、うっかり全部引用してネタバレになるのも、問題があるだろうというわけで、今日は偶々、経済の先生が『戦後史の正体』の感想文を、読まずに妄想して書かれていたのを見て、思わずウケてしまったものだから、重箱の隅を突いてみるわけである。

その記事→陰謀史観の一面の真理 - 『戦後史の正体』

これも、全文引用して逐一突っ込んでいくほどの残酷さも、私には無いので、明らかに「きっつ~」と思ったところばかり、ひとつ引用すると、
著者は、安保を改正した「自主独立派」の岸信介が反政府デモで退陣したのはアメリカの陰謀だというが、この理論は残念ながら、岸がCIAから多額の資金援助を受けた工作員だったという事実と矛盾する。…
いやいや。『戦後史の正体』に「昭和の妖怪・岸信介」の語録を引用してあるのを見ると、
「政治というのは、いかに動機がよくとも結果が悪ければダメだと思うんだ。場合によっては動機が悪くても結果がよければいいんだと思う。これが政治の本質じゃないかと思うんです」
って言うような「昭和の妖怪」が、アメリカの陰謀で潰されたこととCIAの手先だったことの、どこが矛盾するのだろう。妖怪の複雑怪奇な様まで、ちゃんと読もうよ。『戦後史の正体』の著者も 岸首相は、イメージととちがって、大いに研究すべき人物です って太字で書いてくれいるのだから。経済の先生は、ちょっと人間理解の至らなさを露出してしまったかな。
で、恐らく経済の先生が読み飛ばしてしまったのは、このあたりの記述ではなかろうか。
岸信介は、みなさんもご存じのとおり、1960年に新安保条約の締結を強行した人物です。CIAから多額の資金援助をうけていたこともわかっています。したがって米国追随一辺倒だった政治家というイメージがありました。でも調べていくと、驚くべきことに岸は対米自立路線を模索しているのです。
…つまり岸信介の戦後スタートは、米国の占領下で、文字どおり生きぬくために米国に使われること」を選択した人物でした。米国の力を利用して自分の正しいと思う政策を実現しようと考えていたのです。
で、順序どおりに読んでいけば、なにも この理論は残念ながら…事実と矛盾する ということはないが。

忙しいんだろうけれど、本の紹介はちゃんと読んで書きなさいよと、感情の先走った支離滅裂な憶測のやっつけ仕事に対して、フツーに突っ込むわけです。
私は元々、ねちねち一行づつ味わって読んで楽しい本なんかが好きで、もっぱら遅読なんだけれども、やはり、本は速読や流し読みではいかんなぁと、この度は勉強になったところで。

末筆ながら、猛暑が続いております。
どちらさまも水分補給をこまめに、熱中症にはお気をつけください。

※関連過去記事
『戦後史の正体』を買いに
『戦後史の正体』は日本の「戦史」であり「悲劇」であり
『戦後史の正体』を読んで反省したこと
沖縄が複雑怪奇だったもんで
『戦後史の正体』とあのへんの時代の前の時代